10年で激変していた、塗料の世界
ほんの10年前までは、ホームセンターなどで買えるペンキは有機溶剤系の塗料がほとんどだった。昔から塗装に親しんできた人たちにとっては、ペンキ=臭いものという認識が一般的だったのではないだろうか。しかし現在は、DIY向けのペンキはほぼ無臭の水系が主流となっている。ここ10年の間に塗料業界では、有機溶剤系から水系塗料へという大きな転換が起きていたのだ。その取り組みを早い時期から行ってきたのが、和信化学工業(株)だ。
実は、水系塗料は古くから存在はしていた。明治時代にはミルクカゼインを使った国産水系塗料も製造されている。しかし、塗膜の強度、安定性、塗りやすさなどの性能は低く、完全とは言えないものだった。そのため、有機溶剤系塗料が選ばれていき、その歴史が長く続いていた。
90年代終わり頃、転機が訪れた。シックハウス症候群、シックスクール症候群が知られるようになり、揮発性有機化合物(VOC)によるアレルギーが社会問題となったのだ。子どもへの影響が大きいことから問題は重視され、厚生省(当時)は異例のスピードで対策をとっている。97年には、ホルムアルデヒド、トルエン、キシレンなど13種類のVOCについて室内濃度基準値を発表。建築業界、塗料業界にとって、人体への安全性確保が急務となっていった。